ということで, ついに打ち上げ1分前である。カウントダウンが始まる。 カウントダウンを数え間違えないかと真面目に聞いてみたが, さすがにそういうことはなかった (あたりまえだって)。
発射15秒前にはメインエンジンの噴射方向制御システムの駆動用エンジンが 点火され, 白煙が上がる。
「3…2…1…0」
回りの観客に交じって私も「うぉーー」という喚声をあげてしまった。 ものすごい光と煙で, 一瞬ロケット本体は完全に隠された。 が, 音は伝わってこない。 約 2 秒後, あたりはまるで真昼のように明るくなった。 後から聞いた話であるが, M-V は固体燃料ロケットであり, 燃料の主成分がマグネシウムとかアルミニウムといった花火と同じ成分なので, かなり光が強いんだそうである。
ともあれ, すごい光である。夜の暗さに目が慣れていたせいもあるが, 本当に昼間のようである。
「…5…6…7…」
いつの間にか, カウントダウンはカウントアップに変わっていた。 約 7.5 秒後に観客席にも音と衝撃波が伝わってきた。
「ぐごごごごごご」
3km 近い距離が離れているというのに, すごい音量である。 そして, 体が震えるほどの衝撃波。 ロケットはあっという間に高度をあげていき, 光量もいっきに落ちて, あっという間に点のようになっていく。
約70秒後。紹介ビデオによれば, そろそろ一段目が切り離されて, 二段目が点火されるはずである。 目を凝らしてみてみると, 上昇を続ける小さな点から, 急に大きな光の球が分離した。 どうやらこれが一段目の切り離しのようだ。
この後もどんどんと小さくなっていく光の点。 二段目の切り離しまでは何とか見えたものの, それ以降はほとんど見えない。 あっというまである。 しかし, 僕はほとんど何も見えなくなった南の空を見つめ続けた。
センター内の放送では打ち上げの順調な進行を告げている。
「三段目エンジン順調に○○中」 (○○の中身が聞きとれなかった)
「三段目切り離し, キックモーター点火しました」
気がつくと, カウントアップは 1000 を越えていた。 チリのサンディエゴ基地で Planet-B からの電波を受信したという放送があった。 わずか数千秒で地球の裏側までいったらしい。
センター内の放送から, 拍手が聞こえてきた。その拍手からは, 打ち上げに関わったたくさんの人々の苦労と感慨が伝わってきた。
打ち上げは無事終了したようだ。 人工衛星と認められ, 国際標識も取得したという放送が入った。
再び, 貸切りバスに乗って集合場に戻り, この後の予定を聞く。 明日はセンター内のあちこちを見学するそうで, M 台地とかも見られるそうだ。
宿へと帰るころ, まわりはもう白み出していた。 気付ば時刻はもう4時を回っていた。